世界初、待望のSDGインパクト基準研修を日本で開始

みずほフィナンシャルグループへの研修を終えて

2022年12月16日

SDGインパクト基準研修を終えて

Photo: UNDP Tokyo

今年7月、国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁は来日し、「SDGインパクト基準研修」を世界に先駆け、日本で開始することを発表しました。それを受け、8月~10月にかけて、世界で初めてとなるUNDPのSDGインパクト基準研修が日本で行われました。受講したのは、みずほフィナンシャルグループおよびみずほ銀行の社員30名です。本研修は、所定の講師研修を修了し試験に合格した、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)と特定非営利活動法人ソーシャル・バリュー・ジャパン(SVJ)の認定講師によって提供されました。

SDGインパクト基準は、サステナビリティ、SDGs、インパクト志向経営を、事業や投資の意思決定の中核に据える、マネジメントのための世界的な独立基準です。サステナビリティとSDGsの達成に向けた民間セクターの貢献を加速する目的で立ち上げられたUNDPの重要な取り組み、「SDGインパクト」の一環として策定されました。

このSDGインパクト基準研修は、サステナビリティやSDGsを事業の意思決定に組み込むことで、組織内のマネジメントの実践を改善し、企業の行動変容を促すことを目的としています。研修は1)SDGインパクト基準の意義と概要、2)認証取得へ向けた準備、3)インパクト測定・マネジメントの考え方、4)基準実践のための12の行動ステップと、主に4つのモジュールから構成されており、事例を用いた具体的な議論を通じて、理論と実践を体系的にカバーできる内容となっています。

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みずほ銀行での研修の様子

Photo: UNDP Tokyo

研修受講者第一号となったみずほフィナンシャルグループおよびみずほ銀行からは、サステナビリティ関連部署や、経営計画、リサーチ、営業など様々な部署の代表者が研修に参加しました。

みずほフィナンシャルグループ サステナブルビジネス部兼法人業務部 サステナブルビジネス企画室室長兼SDGsビジネスデスク長の末吉光太郎さんは、実際に研修を受講してみて次のように語っています。「事業会社や金融機関がインパクトファイナンスを提供・調達する意義、インパクト創出に向けたマネジメントとはどういうことなのかを考え続ける鮮烈な時間でした。本研修を受けて、サステナビリティ実現に必要なイノベーションは、ビジネス上の新たな競争軸になりうるという確信を得られました。また、研修を通じて企業として最重要インパクト領域を見極め、組織の文化・構造・ケイパビリティの中でパーパスと戦略に整合していくプロセスを理解することができました。」

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時には立ち上がって議論する場面も

Photo: UNDP Tokyo

本研修は、所定の講師研修を修了し試験に合格した、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)と特定非営利活動法人ソーシャル・バリュー・ジャパン(SVJ)の認定講師によって提供されました。世界初のSDGインパクト基準研修を実施するにあたり、両団体からは研修教材の和訳に際し、知見を活かした翻訳校正の支援をいただきました。また研修の実施方法に関しても、少人数のグループに分けて複数回の研修を実施することや、具体的な日本企業の事例にも触れ、双方向的な議論を行うなど、受講者一人一がの深い理解につながるよう、設計に工夫を凝らしてくださいました。

SDGインパクト基準研修認定講師として、今回の研修を担当したSIMIの今田克司代表理事は、「今回、世界初のSDGインパクト基準研修実施となり、期待値も高かったですが、研修参加者のみなさんの活発な参加を受け、実りの多い研修となったと思います。試行錯誤の部分もありましたが、SDGインパクトやUNDP駐日代表事務所との継続的な協議により、教材等の微調整も行いながらより学びの深い内容を模索することができました。あらためて、SDGインパクト基準の変革(トランスフォーメーション)に向けて企業の姿勢を問う射程の高さを実感することができました」とコメントしています。

また、同じく講師を務めたSVJの伊藤健代表理事は「SDGインパクト基準を実践していくためには、企業に対して伴走していく金融機関スタッフが持っている経験値を、研修で学ぶフレームとうまく組み合わせて活用してもらうことが大事だということがよく理解できました。その点でも、今回の研修参加者のみなさんが、積極的に自分たちの経験を共有し、豊かなディスカッションにつなげてもらったのは大変ありがたかったです。研修を終えて、みずほ銀行でどのように研修での学びを活かしていくかについても相談を開始しています」と述べています。

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少人数のグループで各企業の事例をもとに基準の適用を議論

Photo: UNDP Tokyo

このような日本での展開を受けて、SDGインパクトディレクターのファビエンヌ・ミショーは、「新しいSDGインパクト基準研修コースを日本から開始できることを嬉しく思います。日本は、民間企業からの関心が非常に高い市場です。SDGsを北極星として、サステナビリティを経営の中核に据えようとするその意欲は賞賛に値するものであり、今後研修コースを本格的に展開していくことを大変楽しみにしています」と述べています。


参考資料

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世界・日本でのSDGインパクト基準研修実施体制


UNDP SDGインパクトについて

国連開発計画(UNDP)は、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた民間資金の流れを拡大するために、「SDGインパクト」という取り組みを進めています。その目的は企業や投資家が経営方針を決定する際、サステナビリティを中核に据えることを支援し、人と地球に最も良いインパクトをもたらす領域へ資金の流れを生み出すことです。 SDGインパクトの活動の柱は、以下の通りです。

  • SDGsに資する事業運営を行うため4種類の「SDGインパクト基準」(「プライベートエクイティ(PE)ファンド向け」、「債券向け」、「企業・事業体向け」、「OECD – UNDP 持続可能な開発のための資金供給に関する インパクト基準」)の策定
  • インパクトマネジメント研修制度の導入
  • 上記基準に合致した企業等の認証および「SDGインパクト認証ラベル」の提供
  • 投資対象となる途上国のビジネス情報を検索できる「SDG投資情報プラットフォーム」の運営 日本からは渋澤健さん(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役)がこのプロジェクトの運営委員を務めています。

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