ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアの脱炭素化と日本の協力

2023年1月9日
for climate promise to action

 

2022年11月にエジプトで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)では、気候変動が不可逆的な変化をもたらす転換点(ティッピング・ポイント)に到達してしまわないよう、地球とすべての人々のために私たちが今やらなければならないことは何なのか、さまざまな角度から議論が行われました。

国連開発計画(UNDP)は、西バルカン地域に位置する2つの国、ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアで、日本政府の支援による気候変動対策プロジェクトをそれぞれ実施しています。UNDPは「気候の約束(Climate Promise)」イニシアティブのもと、日本政府とともに上記2か国を含む23の国と地域(*ウクライナでの活動は調整中)で、気候変動対策に関するプロジェクトを行なっています。このイニシアティブは主に、脱炭素化に向けたクリーンエネルギーの利用拡大と温室効果ガス排出量の削減、脆弱な環境での気候変動のインパクトに対する適応と回復力の強化、という二つの分野で支援を展開しています。

ボスニア・ヘルツェゴビナで進行中のプロジェクト「包括的な脱炭素化に向けた取り組み」では、公正かつジェンダー平等を尊重しながら、2050年目標であるカーボンニュートラルを実現するため、政府の行動計画を支援しています。セルビアで進んでいるプロジェクト「セルビアにおける公正でグリーンな移行と脱炭素化」では、公正な移行の原則を定義したうえで、グリーン・トランスフォーメーションと経済の脱炭素化に向けた取り組みに反映させていくことを支援しています。

これらのプロジェクトは、気候変動に関する影響を最も受けるとされるセクターで、テクノロジーを活用するとともに革新的なビジネスモデルを構築し、グリーンビジネスの原則を適用する両国の企業と日本の企業との協力関係を強化することを目的としています。

2つのプロジェクトで最も重要なのは脱炭素に向けた解決策を実施する中小企業の選定ですが、その選定プロセスに続く活動を加速させるためのプロセスでは、中小企業に革新的なビジネスモデルについて学ぶ機会を提供し、日本企業との協力の可能性を検討する環境を整える必要があります。こうした研修の機会を作りたいという共通の目標から、UNDPのボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアの両プロジェクトチームは2022年6月、ベオグラードにある国際協力機構(JICA)の事務所を訪ね、UNDPとJICAの協力の可能性について話し合いました。

中小企業の活動を加速させるためのプロセスは、脱炭素と公正な移行の原則の相乗効果を下支えするとともに、選ばれた中小企業が新しい体系的な考え方を取り入れるのを手助けし、分野横断的なテーマに関する能力を向上させることを目的としています。そこで、ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアの両プロジェクトチームは、カイゼン・インスティテュート・クロアチア(KAIZEN Institute Croatia)を現地パートナーとし、2022年10月から両国の中小企業に対する一連のトレーニングを実施しました。

ボスニア・ヘルツェゴビナでは中小企業20社と政府機関代表者10人、セルビアでは政府機関と中小企業の代表者15人を対象にカイゼン研修が行われました。研修の一環として、参加者らは日本企業のバーチャル・スタディ・ツアーに招待され、カイゼンの手法や実践的なツールの適用について学びました。研修終了後には、カイゼン・インスティテュートから研修参加者に修了証が発行されました。今後、ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアの中小企業が二酸化炭素の排出量を長期的に減らしていくうえで、資源の最適化など日本のカイゼンの方法論とツールが大いに活用されることが期待されています。

また、質の高い研修の次のステップとして、2つのプロジェクトチームは、2つの国の中小企業が日本企業と協働する可能性を探るための環境を創り出すことにも尽力しています。セルビアのチームは、プロジェクトパートナーであるセルビア日本商工会(JBAS)とともに、会員の日系企業をボスニア・ヘルツェゴビナに招き、現地企業と共に企業間取引(B2B)に関するイベントやスタディー・ツアーの開催を含むさまざまな連携の可能性について協議しています。

ボスニア・ヘルツェゴビナとセルビアは、「誰ひとり取り残さない」という信条に基づき、公正でグリーンな移行と脱炭素化に向けて歩みを進めています。

お問い合わせ・取材申し込み先
国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 registry.jp@undp.org