開催報告:公開イベント「不確実な時代における人間の安全保障と人間開発」

共催:UNDP、外務省、JICA緒方貞子平和開発研究所

2023年5月9日
Photos: UNDP Tokyo

国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所は、4月26日(水)、人間開発報告書(2021/2022年版)及び人間の安全保障特別報告書(日本語書籍出版)のローンチ・イベントとして、「不確実な時代における人間の安全保障と人間開発」を三田共用会議所にて開催しました。

はじめに、武井俊輔外務副大臣による開会の挨拶(外務省地球規模課題審議官の赤堀毅氏による代読)が行われたのち、参議院議員であり人間の安全保障に関する特別報告書ハイレベル諮問パネル共同議長を務められた武見敬三氏の祝辞を頂戴致しました。祝辞の中で武見氏は、「人新世」と称される不確実な時代において、包括的な政策概念としての「人間の安全保障」の意義を強調しました。

プログラムの第一部では、UNDP人間開発報告書室長のペドロ・コンセイソン氏により「人間開発報告書(2021/2022年版)及び人間の安全保障特別報告書からの示唆」と題する発表が行われました。コンセイソン氏は、「人新世」と呼ばれる時代の中で、気候変動や不平等、紛争などの新世代型の複合的危機の発生を指摘し、人間開発指数(HDI)の高い国でさえも不安全感が高まり、ますます社会の分断が進む現状に対して、「人間開発」と「人間の安全保障」が果たしうる可能性について報告を行いました。

プログラムの第二部では、パネリストとして赤堀毅氏(外務省地球規模課題審議官)、峯陽一氏(JICA緒方貞子平和開発研究所研究所長)、長有紀枝氏(難民を助ける会会長、立教大学教授)、田中梨奈氏(持続可能な社会に向けたジャパン・プラットフォーム[JYPS]共同事務局長)の4名をお招きし、コンセイソン氏をモデレーターとして「不確実な時代における人間の安全保障と人間開発―複合化する危機への対応策を模索する」と題するパネル・ディスカッションを行いました。

パネル・ディカッションでは、「人間の安全保障の推進」を中心に、パネリストそれぞれの立場から様々な議論が活発に行われました。複合的な危機の時代においては、「人間の安全保障」が開発の現場で包括的な視点を与えることができる実践の概念となりうること、そして、人間の安全保障特別報告書で言及された「行為主体性(Agency)」が、人間開発に強く結びつく概念であり、それを実現するためには「連帯」と「強靭性」という概念が相互に結びつき影響することなどが議論されました。更に、「人間の安全保障の推進」には、世界中の多様な「ユース」の声を取り上げて「連帯」することで世界の発展に貢献できる可能性があることなどについてもパネリスト間で意見が交わされました。

イベントの最後に、UNDP駐日代表事務所代表代行の江草恵子より閉会の挨拶が行われ、最近のトルコ・シリアの大地震やスーダンでの人道危機にも触れながら、不確実な時代における「人間の安全保障」と「人間開発」の重要性を述べ、本イベントを総括しました。