共に成長する力:アフリカの未来に向けた起業を通じた解決策

2023年12月に開催されたAFRI CONVERSE(アフリコンバース)では、「アフリカのイノベーションの台頭:持続可能な開発のための起業ソリューション」というテーマのもと、アフリカのリーダーシップの重要性や、起業家育成に対するコミットメントが強調されました。

2024年2月6日

セッションの様子

Photo: The University of Tokyo

アフリカは、豊かな資源と急成長する若年人口に特徴づけられますが、同時に課題と機会を抱えています。依然として貧困や不平等といった課題を抱える一方、スタートアップ企業は教育、農業、医療、エネルギー、金融などの分野でのイノベーションを通じて、社会経済の課題に取り組む変化の触媒となっています。

日本からのアフリカへのスタートアップ投資は増加傾向にあり、包括的な経済成長や技術革新、そして国際協力の強化に繋がっています。日本政府によってアフリカのスタートアップへの投資を増やす戦略的なコミットメントが表明されたことを受け、日本企業とアフリカの起業家との協力やシナジーが形成され、新たなビジネスの機会を生み出し、アフリカの経済と社会の発展に大きく寄与する可能性があります。

2023年12月に開催された、TICAD(アフリカ開発会議)並びにアフリカ開発をテーマとする対話型のイベント「AFRI CONVERSE(アフリコンバース)」では、"アフリカのイノベーションの台頭:持続可能な開発のための起業ソリューション"というテーマのもと、主要な関係者が議論を展開しました。

冒頭、JICA理事長特別補佐の中村俊之氏が、アフリカでの経済構造転換の必要性を強調しました。同氏は、人口が13億を超え、2022年にはアフリカへの投資が約450億ドルを記録したことなど、アフリカの成長可能性を強調するとともに、拡大する人口を吸収するための雇用の創出が課題であることに言及しました。

また中村氏は、アフリカのスタートアップの著しい成果として、54億ドルの投資を確保したことを称賛し、今後アフリカの活力と日本の技術力を結集し、共通の社会的課題に対処していくための連携重要であると強調しました。

外務省アフリカ部アフリカ一課長の西野修一氏は、アフリカの広範な可能性に焦点を当て、人口の恩恵と消費、生産、気候変動対策等におけるビジネス上の機会を強調するとともに、世界的な競争と政治的な緊張の高まりの中で、アフリカのリーダーシップの重要性を強調しました。またTICADのような国際的なプラットフォームを通じて、多様なステークホルダーを結集し、イノベーションを促進しつつ、アフリカ及びグローバルな課題解決について、アフリカとの共創を通じて、革新的な解決策を共に考え、生み出し、広げていくことを呼びかけました。

パネルディスカッションの様子

Photo: The University of Tokyo

続くパネルディスカッションでは、READYFOR株式会社 CEO室の富澤由佳氏がモデレーターを務め、アフリカでビジネスを通じた社会的課題に取り組むチャンスと課題に焦点を当て、登壇者達による議論を促進しました。

UNDPマラウイ事務所の民間セクター開発専門家であるチンツィア・テッチは、社会起業家に対するファイナンスへのアクセスを促進する重要性を強調し、そのためにはUNDPのような開発機関が行うデューデリジェンス及び、製品マーケティング、メンターシップ、ネットワーキング等のサポートを含む、包括的なアプローチが必要であると述べました。

国際協力機構(JICA)経済開発部民間セクター開発グループ、主任調査役の伊月温子氏は、アフリカのスタートアップエコシステムの構築と成長への支援に焦点を当て、特に「NINJA」のインキュベーションとアクセラレーションプログラムがビジネスの専門的なスキルと知識の向上に寄与していることを強調しました。これにより、起業家たちにはグローバルなネットワーク構築の機会とメンターシップが提供され、イノベーションの促進にも寄与していると述べました。

東京大学 執行役・副学長、教授の染谷隆夫氏は、起業家育成とスタートアップ支援に対する同大学のコミットメントに触れ、1兆円のベンチャーを創出することを目標としていると述べました。また、同学発のスタートアップであるWASSHA株式会社を紹介し、アフリカの非電化地域での所得向上に貢献する輝かしい例として挙げました。パネルディスカッションでは、若い世代に対して、創造的なマインドとエネルギーを活かし、さまざまなパートナーと共同で解決策を「共創」することを奨励し、大陸に果敢に飛び込み、積極的に関与することを提案しました。

WASSHA 株式会社の代表取締でCEOの秋田智司氏は、所得向上、電力へのアクセス、および事業拡大への再投資に同時に取り組むビジネスの重要性を強調し、実践的な視点を提供しました。同氏は、地方の小売店との成功した協力関係を紹介し、地元コミュニティに与える肯定的な影響を強調しました。また、アフリカでの支援の影響を最大化するために、製品の単なる販売ではなく、多層的な社会的課題に対処するサービスを提供するために協力できるパートナーと包括的に連携するよう呼びかけました。

KOBARAX株式会社執行役員・一般社団法人NISEN CO-LABSの共同創業者兼代表取締役のマリーム・ジョセフィン氏は、セネガルと日本の間で画期的な解決策を生み出し関係者の連携を促したいと述べました。同氏は、事業の成功は信頼できる日本のパートナーの特定に起因すると述べ、若い起業家に対してアフリカとのネットワークを拡大することで、現地の状況や機会を理解することができ、大陸での起業活動が向上すると鼓舞しました。

今回開催された2023年第4回目のアフリコンバースにおけるパネルディスカッションでは、日本とアフリカの起業家の間での協力と共創の重要性が強調され、若い世代に対してアフリカでの活気ある機会を感じ取り、実際に大陸に飛び込み、現地の人々とのつながりを広げ、若者特有の強みを発揮し、さまざまな関係者と積極的に関与することが奨励されました。また、開発パートナーは、アフリカの起業エコシステムの成長をサポートし、イノベーションを促進するために引き続き協力していくことを確認しました。