アフリカの水資源と開発にフォーカス:UNDPとJICAが共同で対話型イベント『AFRI CONVERSE』を開催

2023年第2回アフリコンバースでは、気候変動の影響を最も受けると言われるアフリカにおいて、アフリカの水アクセス向上に向けて、持続的な水管理の重要性や様々なステークホルダーによる解決策に触れながら、専門家たちが議論しました。

2023年9月4日

セッション中の専門家たちによるディスカッションの様子

UNDP Regional Bureau for Africa

世界が気候変動などの複雑な国際的な開発課題に立ち向かう中、アフリカ大陸も自身の取り組みを強化し、影響をもたらすパートナーシップを拡大しています。2022年、UNDPは気候変動のイノベーションを牽引する50人の若く才能あるアフリカ出身のイノベーター(変革者)を紹介しました。UNDPの、アフリカ開発における影響力のある人物を紹介する基幹誌である「Africa Innovates」の第2版では、食品、農業、エネルギー、電動モビリティ、生計向上の分野でのイノベーションと自国内における解決策が紹介されました。これらの独自の貢献の中心にあるのは、水資源という、非常に希少でありながら、人類のあらゆる活動に必要な資源です。

アフリカの水資源の管理を持続可能にする方法は、国際協力機構(JICA)とUNDPが共同で開催した「AFRI CONVERSE 2023」の第2回でのテーマとなりました。このイベントはハイブリッド開催され、アメリカ、日本、ウガンダを拠点とする専門家が集まり、成功を促進するための効果的な方法とパートナーシップについての洞察を共有しました。

「アフリカは深刻な水不足と繰り返し起こる干ばつに直面し、人口増加と都市化により水へのアクセスに甚大な圧力がかかっています。不適切な水のインフラは持続可能な地下水の利用を妨げています」と、ベナン出身で東京都市大学の修士課程に在籍し、JICAの「ABEイニシアティブ」プログラムの参加者である、アフアンボエベ・セナ・ジユレ・パスカル氏は述べました。

「地下水は解決策の一部として重要な役割を果たす可能性がありますが、それを実現するためには地下水資源のガバナンスと管理を強化する必要があります。これはデータと技術に基づくプロセスであるべきです。」と、パスカル氏は主張しました。

JICAの地球環境部水資源グループ水資源第二チーム課長の服部 容子氏は、都市部の水供給率が、2015年の58%から2020年には56%に低下し、農村地域では49%未満であるという懸念すべき状況について述べました。これにより、約2億人の都市部住民と3億人以上の農村住民が清潔な水にアクセスできず、水源伝染病、労働集約型の水の調達、栄養問題が生じ、さらには気候変動による干ばつや洪水の激化が状況をさらに悪化させていると述べました。

服部氏は、「JICAは安全な水へのアクセスを確保するため、各国ごとに長期的な協力シナリオを開発し、適切な施設の運用と保守に力を入れ、協力資源と資産、また社会経済的、地形的、自然条件を考慮に入れています。」と述べました。また、JICAはアフリカの水資源分野における主要な支援機関として、技術協力プロジェクトに14件参加し、トレーニング提供や若者のボランティア派遣に取り組んでいることに言及しました。「都市の水供給プロジェクトは安全な水へのアクセス向上と持続可能な公益事業の促進に大きな影響を与えており、成功した事例として、南スーダンのジュバにおける1日あたり10,000 m³の処理能力を持つ水処理プラントが挙げられます。」と述べました。

また服部氏は、JICAの水資源協力戦略に不可欠なイノベーションに言及し、その一例として、故障を即時に報告できるQR装備の手動ポンプの取り組みを紹介しました。「知識と専門知識を共有することで、JICAはアフリカのパートナーに持続可能な水管理の力を与えています。NGO、ドナー、民間企業との協力により、JICAの衛生慣行の普及を共に促進しています。持続的な協力のコミットメントを持ちながら、JICAはアフリカの水に関連する課題に対処し、水に安心な未来を創造しようと努力しています。」と述べました。

水資源の開発におけるイノベーションの役割は、ウガンダで活動する日本のスタートアップ、株式会社SUNDA Technology Global 代表取締役CEOの坪井 彩氏からも共有されました。坪井氏は、水不足の解決に取り組むために地域社会と協力するJICAボランティアとして活動した経験から、水の使用をリアルタイムで追跡するIDタグシステム「Sunda」を開発しました。これにより、住民が使用した水だけを支払い、浪費を削減し公正な請求を確保できるようになり、今では約10,000のIDタグが毎月積極的に使用されています。

「全体的な戦略には、地域のサービスセンターであるプロフェッショナルサービスオペレーターと提携することが含まれており、これらのオペレーターがSundaユニットの設置と管理を担当しています。水の収集から得られる収益は、システムの普及を維持し、ウガンダおよびアフリカの他の地域でのシステムの拡張を目指し、必要なコミュニティに対してアクセス可能で効率的な水供給ソリューションを提供することを目指しています。」と坪井氏は述べました。

一方、ウォーターエイドジャパン事務局長である高橋郁氏は、水が、健康、栄養、ジェンダー平等、気候変動に関連するSDGs(持続可能な開発目標)を結ぶ重要な要素であることを強調しました。また、人口増加、都市化、気候変動などの要因によって引き起こされる水に関連する課題の複雑さに対処するために、共同の取り組み、革新、パートナーシップの強化を呼びかけました。

UNDP 水資源パートナーシップスペシャリストのラヴィ・カミラは、アフリカの角地域において、近年立ち上げた地下水アクセス施設(Groundwater Access Facility、GaFa)により、国境地帯における浅い地下水域と深い地下水帯をマッピングし、少なくとも30の脆弱なホットスポット地域を特定することで、農牧業コミュニティのニーズに特化した持続可能な地下水管理インフラとプログラムの開発が可能となると述べました。また、気候変動の早期警告システムを統合することで、計画者や利害関係者は気候変動に積極的に対応し、地域でより強靭な水管理プラクティスを確保できるようになる仕組みについても言及しました。

「UNDPはこの取り組みを、アフリカ角地域およびサヘル地域全体に展開し、加盟国と協力して、TICADの目標である生命の保護、経済の強化、平和と安全保障と調和させることを目指しています。」と、日本とのパートナーシップ強化への取り組みについても言及しました。


AFRI CONVERSEについて

JICAとUNDPが共同で主催する対話型のイベントで、日本政府が主催するTICAD(アフリカ開発会議)とアフリカの開発に関連するテーマに焦点を当てています。このイベントは2020年から開始され、過去のTICADで提起された開発課題のフォローアップを行い、今後のTICAD開催に向けて議論を促進することを目的としています。

またUNDPは、アフリカの政府、日本政府、民間セクター、および他のパートナーと協力し、新しい包括的なアフリカ開発アジェンダを実現することにコミットしています。持続可能な水資源と気候耐性は、この協力の中心にあります。