2020年は顧みられない病気への対策強化のための重要な年に

第二回新規医療技術アクセスと提供のためのグローバル対話を実施

2020年5月30日

左からマンディープ・ダリワル(UNDP本部HIV・保健・開発グループ ディレクター)、厚生労働省大臣官房国際課国際保健・協力室の田口一穂室長、GHIT基金 大浦佳世理CEO、セシリア・オウ(UNDP HIV保健開発チーム・ADP顧問) Photo: Ian Mungall/UNDP.

バンコク-2020年は、持続可能な開発目標(SDGs)達成のために重要な年となります。SDGsの中には、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Disease, NTDs)のための医薬品、ワクチン、診断技術やその他の医療技術のイノベーション、アクセス、提供の向上も含まれます。この重要な目標達成のため、2020年に100人の専門家がバンコクに集まりました。

新規医療技術アクセスと提供のためのグローバルプラットフォームは、政府(ドナー国及びNTDsの流行国)、イノベーター、投資家、医療技術提供の専門家、国際機関、UNDPや世界保健機関(WHO)等の国際機関から様々な分野の医療専門家が一堂に会するグローバル対話を実施しました。2020年2月2日から3日にかけて行われたこのグローバル対話は2019年に引き続き2回目となり、2020年に実施される新規医療技術アクセスと提供の強化を目的とした取組のうち、最初の会合となります。

新規医療技術アクセスと提供のためのグローバルプラットフォームは、特に低中所得国における、結核、マラリア、NTDsを含む顧みられない病気のための医薬品へのアクセス向上に焦点を当てています。このグローバルプラットフォームは2019年に日本政府、UNDPが牽引するアクセスと提供に関するパートナーシップ(ADP)、及びグローバルヘルス技術振興基金 (GHIT Fund)により設立されました。

住血吸虫症、デング熱、シャーガス病のようなNTDsを治療せずに放置した場合、患者は衰弱し、死に至る場合もあります。NTDsは患者の家族、貧困、労働力、経済にわたるまで、様々な側面に影響をもたらします。そして、医療技術の進歩にも関わらず、少なくとも10億人以上の人々がNTDsに感染していると考えられており、WHOは世界の149の国で少なくとも一種類のNTDが流行しているとの調査結果を公表しました。

第二回目の新規医療技術アクセスと提供のためのグローバル対話は、2030年に向けたSDGs達成のための「行動の10年」開始と重なる、絶好のタイミングで開催されました。

UNDP本部HIV・保健・開発グループ ディレクターのマンディープ・ダリワルは、「2020年は重要な年となるでしょう。このグローバル対話は、新規医療技術へのアクセスと提供という重要な課題解決を大きく前進させるための貴重な機会の一つとなります」とこのイベントの重要性について述べました。

ダリワル氏はまた、「今こそが顧みられない熱帯病を『顧みられる』ようにするための重要な機会なのです」と、最近のランセット誌の記事で言及しました。

今回のグローバル対話は、二つのテーマを基に構成されました。一つ目は、新規医療技術・医薬品の研究開発の段階において、アクセスと提供に関する計画をどのように準備するか、そして二つ目は、顧みられない病気のためのアクセスと提供への投資の増加と改善のための戦略をどのように準備するかです。このグローバル対話では、政府の上級代表、イノベーター、投資家、市民団体、そしてその他の保健医療専門家が発表を行いました。多くの発表者が、このグローバルプラットフォームの課題解決のための重要性、そして顧みられない病気への効果的対策のためのアクセスと継続的投資の改善の必要性を強調しました。

専門家たちは、基礎科学及び新規医療技術の研究開発と、最終的な医療技術のアクセスと提供をつなぐために必要な連携が不足していることを指摘しました。また投資者、製品開発パートナーシップやイノベーターが、アクセスと提供に関する視点を製品開発の時点で入れ込んでいないことも課題として挙げられました。さらに、開発された医療技術のアクセスと提供のための投資が不足していることも課題として提起されました。

厚生労働省大臣官房国際課国際保健・協力室の田口一穂室長は、「革新的な製品を必要な人々に提供し、患者の命を救うという目標を達成するには、研究開発に始まり、アクセスと提供に至るまでの一貫した政策が必要です。また、それぞれの疾病における予防と治療の違いや、国毎のニーズが異なることも考慮しなくてはなりません」と指摘しました。


第二回新規医療技術アクセスと提供のためのグローバル対話のテーマ別ワーキンググループで、活発な討論を行う参加者。
Photo: Ian Mungall/UNDP.

参加者は、多様な知識と経験を持ち寄り、重要なツールやガイダンスを含む、成功事例や課題解決のための機会を共有しました。また、国が主導となって取組むことや、顧みられない病気のための投資提案(Investment Cases)の有効性が、主要な課題として挙げられました。

また、グローバルプラットフォームの取組の一部として、研究開発に係る政策と実践に関するレビュー、顧みられない病気のための医療技術のアクセスと提供への投資動向レポートや、顧みられない病気のための投資の成功事例のガイダンスノート等が作成されており、専門家のフィードバックを経て完成する予定です。2020年のグローバル対話は、ダイナミックで革新的な参加型アプローチを使い、専門家や各国からの参加者が主要な課題に関して活発に意見交換や質問をする機会を多く設けました。

2020年に顧みられない病気のための医療技術のアクセスと提供が重要となるのは、WHO主導により作成されているNTDロードマップ2021-2030、また2012年のロンドンNTDs宣言のフォローアップとなる、マラリアとNTDsサミットがルワンダの首都キガリで6月に開催予定という理由もあります。また、2020年は、12の保健機関が参加し2019年に作成された「すべての人々の健康と福祉のためのグローバル行動計画」が実施される初めての年でもあります。また、2020年1月30日は初めての国際NTDsデーとなり、これも2020年がNTDsと闘うための重要な年となる理由の一つです。

グローバル対話においては、WHOのNTD部局、NTDsのための国際的アライアンスである「 Uniting to Combat NTDs」、キガリで行わるNTDサミットの組織運営委員会から発言の機会がありました。またWHOの代表は「すべての人々の健康と福祉のためのグローバル行動計画」における研究開発、イノベーションとアクセスの推進について説明し、Drugs for Neglected Disease initiative (DNDi)の代表は、DNDiの15年の経験からの学びを参加者と共有しました。

GHIT基金の大浦佳世理CEOは、グローバル対話の中で行われた低中所得国におけるアクセス向上のための「触媒的投資(Catalytic funding)」の必要性の議論に触れ、「このグローバル対話に集まる皆さん、医療技術のイノベーションやアクセス、提供をつなぐ触媒となるカタリストたちです。私たちは変革を起こすことができるのです」と述べました。

参加者は、新規医療技術アクセスと提供のためのグローバルプラットフォームの重要性を称え、今後も継続的に貢献していく意思を表明しました。また、投資家、イノベーター、アクセスと提供などの多分野にわたる、卓越した専門家たちの連携を推進するこのグローバル対話の独特の付加価値と重要性を、多くの参加者が強調していました。