アフリカは、資源と人口増加に恵まれ、経済成長の可能性が高い一方で、主要な労働力が農業従事者であるためにその潜在力が活かされていないという課題があります。国際労働機関（ILO）のレポートによれば、2023年には労働人口の約半分が農業従事者となる見通しであり、他地域に比べてその変化が遅れているとされています。この経済構造の遅れは、価格変動の影響を受けやすい第一次産業に由来する脆弱性を引き起こしています。アフリカが持続的な成長を実現するためには、労働人口と経済の多様化が重要な役割を果たすことが必要です。

このような状況の中で、アフリカの若者たちは大いなる可能性を秘めていますが、全世界的に若者の失業率は高い水準です。アフリカ内でも地域による違いがあり、特に女性の雇用率は北アフリカでは低い一方、サハラ以南では大きな地域差が見られます。失業率だけでなく雇用の質も考慮すべきであり、サハラ以南の若者の低い失業率は、十分な雇用機会の不足を示しています。アフリカは世界で最も若い人口を抱える地域であり、これによる経済発展のチャンスは大きいですが、若者たちが生産的な雇用機会を見つけ、成長産業に必要なスキルを獲得することが必要です。近年のパンデミックの影響を受け、計画的かつ戦略的な政策によって、若者たちに生産的な雇用の機会を提供し、持続可能な未来を築くための投資が不可欠です。G7の公式声明には、多国間フォーラムにおけるアフリカのリーダーシップを向上させる必要があると明記しており、そのためには大陸の未来への鍵を握る人材、特に若者たちへの投資が必要となってきます。

これらの背景を受けて、アフリカ諸国における社会課題の解決や産業発展において主要な役割を担うハイレベルなスキルを有する人材の育成を目標に掲げる2つの活動があります。JICAによるABEイニシアチブと、UNDPのAfrican Young Women Leaders Fellowship Programです。日本政府はアフリカを「日本と共に成長していくパートナー」であるとし、多くのイニシアチブを進めてきました。2022年8月には第8回アフリカ開発会議（TICAD 8）がチュニジアの首都チュニスで開催され、会議に参加した岸田総理が「人的投資」と「質の高い成長」への日本のコミットメントを強調しました。会議を通して、日本政府は官民セクター合わせて300億ドルの投資を表明しました。

日本の二国間開発機関であるJICAは2014年以降、若者の才能への投資の基盤となる活動としてアフリカの若者たちが日本で修士課程を取得、ひいては日本のビジネスとの繋がりを得られるプログラムであるABE（アフリカビジネス教育）イニシアチブを主導しています。日本での学業やインターンシップを終え故郷に帰国してから、このプログラムの参加者たちは個々の国の経済成長に業界のプロとして貢献するだけでなく、日本・アフリカ間のビジネスの架け橋にもなっています。2023年は、2013年に横浜で開催されたTICAD Vにおいて当時の安倍晋三首相からこのプログラムについて発表されてから10年目の記念の年にあたります。

国連組織の中でも開発分野を主導する機関として、UNDPも若者の才能には多くの投資を行ってきました。近年では、African Young Women Leaders Fellowship Program (AfYWL)を設け、アフリカの女性たちに雇用機会を与え、アフリカ連合の連携を得て国連における職業訓練などを提供してきました。このイニシアチブは2019年に始まり、2022年には5,254名の応募者の中から40名のAfYWL参加者が選ばれました。参加者たちはアフリカ、アジア、ヨーロッパ、そしてアメリカにある27のUNDPのオフィスに派遣され、気候変動、エネルギー、若者や女性に関する課題、経済転換、平和と安全など、様々な領域でのSDGsとアジェンダ2063の実現に向けて活躍してきました。これは、彼女たちが次世代のアフリカの女性として、そして世界のリーダーとして求められる価値のある職業経験を積むための活動です。

本セッションは、若い才能への投資という観点から大陸の将来的な発展への展望について議論します。ハイレベルの登壇者たちが、アフリカの若者たちによるリーダーシップの獲得や彼らへの成長支援に取り組む際の機会、現実との乖離、そして将来的なパートナーシップに関して語り合います。