地球規模の危機が世界の金融をいかにして変えるのか

グリーンボンドから自然に基づく解決策まで、金融は持続可能性に成長を見出す

2025年1月17日
women in village working in garden

地球の健康と金融の安定性は、いかに深く結びついているか。グローバル金融の変革はもはやオプションではなく、不可欠。

  • 環境危機が金融の安定性と経済の回復力をますます脅かすようなってきた中で、持続可能性を金融システムに組み込むことは、システミック・リスクを軽減するために不可欠である。 
  • 強固な内部プロセスと意思決定の枠組みが持続可能性の開示をサポートし、表面的な報告ではなく、実行的な成果につながるようにしなければならない。 
  • 金融機関は、グリーンボンドや持続可能性連動ローンのような商品を革新し、自然に基づく解決策や持続可能性の目標に沿った投資を行うことで、成長の機会をつかむことができる。 

2025年を迎え、世界の金融セクターは極めて重要な局面を迎えています。生物多様性、気候、砂漠化に関する3つの主要な国連締約国会議(COP)を経て、ひとつの真実が議論の余地のないものとなりました。それは、グローバル金融の変革はもはや避けては通れないということです。これらの会議は、地球の健康と金融の安定がいかに深く結びついているかを示し、公共部門と民間部門が緊急に対応する必要性を強調しています。

コロンビアで開催された生物多様性に関するCOP16、アゼルバイジャンで開催された気候に関するCOP29、サウジアラビアで開催された砂漠化に関するCOP16では、世界の主要な金融機関が議論に参加し、相互に関連する地球規模の課題に取り組む上で、民間資本が重要な役割を果たすことをアピールしました。

これらの会議では、生物多様性の損失、気候変動、土地の劣化がいかに金融の安定を脅かすかが示され、長期的な経済の回復力を確保するために、投資とリスク管理の枠組みに持続可能性を組み込むことの緊急性が強調されました。

国連環境計画(UNEP)によると、生物多様性、気候変動、土地劣化の危機に対処するためには、2050年までに世界の自然への投資を4倍に拡大する必要があり、毎年5,360億米ドル以上が必要となる計算です。生態系が崩壊し、天然資源が減少すると、連鎖的な影響により、商品価格から国債の格付けまで、あらゆるものが脅かされることになります。

「自然関連財務情報開示タスクフォース」や「不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース」のような枠組みは不可欠ですが、情報開示だけでは、必要な制度的変化をもたらすことはできません。

開示がインパクトのあるものとなるためには、基礎となるデータと内部プロセスが強固で高品質でなければなりません。加えて、金融機関は、自然、気候、土地のリスクをビジネスモデルや意思決定プロセスに統合する必要があります。このアプローチは、リスク管理を向上させるだけでなく、金融システムの中核に持続可能性を組み込むことを意味します。

 

情報開示を超えて

効果的なインパクト・マネジメントとは、単にリスクを測定することだけではなく、それに基づいて行動をすることです。UNDPでは、表面的な報告によって進捗があるかのような錯覚に陥り、その一方で、より深刻な制度的リスクに対処されないままであることを目の当たりにしてきました。情報開示の枠組みは、持続可能性を優先する強固な内部システムとセットでなければいけません。これがなければ、情報開示は単なる形式的な作業に終わってしまいます。

UNDPと国際標準化機構(ISO)が共同で「持続可能な開発目標のためのガイドライン」を立ち上げたのもそのためです。これらのガイドラインは、持続可能性を中核業務に組み込み、野心的な目標を測定可能な成果に変えるためのツールを企業に提供しています。

銀行や投資家を含む民間セクターのプレーヤーは、持続可能性をその根幹に刻み、リスクフレームワーク、商品開発、顧客戦略に組み込まなければなりません。こうした内部的な移行がなければ、外部報告は環境リスクを軽減できないでしょう。

 

リスクを機会に変える

このような変革を受け入れる金融機関にとって、その報酬は大きいものです。グリーンボンドの年間発行額は1兆米ドルを突破し、持続可能性に焦点を当てた商品の財務的な成長の可能性を示しています。森林保護や土地の修復など、自然に基づく解決策は、環境的リターンと経済的リターンの両方を提供する投資機会として人気を集めています。

同様に、持続可能性に連動したローンは、金利を環境パフォーマンスに連動させることで、企業金融に変革をもたらしつつあります。 

UNDPでは、機関投資家が持続可能性の目標に沿った投資を行えるよう支援するツールを提供することで、こうしたイノベーションを支援しています。SDGsインベスター・プラットフォームは、再生可能エネルギーや生物多様性保全など、金融機関がリターンと環境へのプラスの影響の両方を達成できる機会に関する市場戦略情報を提供しています。

これらのイノベーションは、持続可能性とはリスクを管理することだけではなく、新たな機会を捉えることであることを示しています。イノベーションを起こす金融機関は、バランスシートを守るだけでなく、持続可能性がますます重視される経済において新たな成長市場にアクセスすることができるでしょう。

 

金融の変革

金融機関が進むべき道は明確です。

第一に、長期的なリスクを軽減するために不可欠な、環境および社会的影響を測定・管理する社内システムを構築すること。

第二に、持続可能性の指標を中核的なリスクの枠組みに組み込み、環境要因が意思決定の指針となるようにすること。

最後に、グリーンボンドや自然をベースとしたソリューションなどの金融商品を革新し、持続可能な成果に向けて資本を誘導することです。

1月にダボスで開催される世界経済フォーラムの年次総会に世界のリーダーたちが集まる中、金融機関は転換期を迎えています。ツールは整い、ビジネスケースは証明され、不作為がもたらす結果はもう否定できません。 

金融の未来は、環境や社会的課題をチャンスに変える人々のものです。問題は、金融が変革するかどうかではなく、誰がその道を切り開くかなのです。今行動する者は、自社のバランスシートを守るだけでなく、持続可能で強靭な世界経済がもたらす計り知れない可能性をつかむことになるでしょう。

UNDPは、金融のリーダーたちがこの変革に乗り出せるよう、ガイダンス、フレームワーク、洞察を提供し、今必要とされている大胆で変革的なリーダーシップの推進を支援していきます。


本記事は、The Bankerにて掲載されたものを、許可のもと転載した記事の翻訳版です。