日本から2023年度補正予算で1億3,900万米ドルの支援

2024年5月23日
Photo: UNDP Nigeria

2024年、UNDPは日本政府の2023年度補正予算から約1億3,900万米ドルの資金拠出を受けました。この拠出金は、以下の国と地域において、人間の安全保障を推進する23件のプロジェクトに充当されるとともに、2件のテーマ別プロジェクト(①ビジネスと人権、②新規医療技術へのアクセスと提供に関するもの)に活用されます。

アジア・太平洋地域ではアフガニスタン、インド及びスリランカの国別案件に加え、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域向けの広域案件やプラスチック汚染対策案件を実施します。アフガニスタンでは、地域集中型多角的支援プログラムであるABADEI (Area-Based Approach to Development Emergency Initiatives)プログラムの一環として、「Women(女性), Work(雇用) and Water(水)」の観点から、水不足に対処し、生態系の保全を促進し、これらの取り組みを雇用創出とエネルギー供給に繋げ、気候変動への適応を強化する事業を行います。スリランカでも気候変動に脆弱なコミュニティ、特に若者や女性、農村起業家の人間の安全保障とエネルギー供給を強化し、ネット・ゼロに向けた公正なエネルギー移行と持続可能な開発を支援します。ASEAN地域では、海洋資源の持続的な利用を通じて海洋環境を保全しながら経済発展を目指す「ブルーエコノミー」の観点から、海洋プラスチック汚染、持続可能な観光、持続可能な漁業等の課題に取り組みます。

北アフリカ・中東地域ではイラク、エジプト、シリア、ソマリア、チュニジア及びヨルダンにおいて、6件のプロジェクトを実施します。シリアでは地震で被災した人々とコミュニティに対して、住宅修復等を通じた基本的サービスへのアクセスの回復や、尊厳のある生活と社会的保護の実現に向けて支援します。ヨルダンでは脆弱な立場にある若者や女性に焦点を当て、デジタルリテラシーやデジタル技術の習得を通じて持続可能な生計手段を提供します。イラクにおいてもジェンダーに配慮した支援を通じて、避難民や帰還民の信頼構築・社会的結束の強化、コミュニティの安定化、雇用機会の創出等を目指します。

サハラ砂漠以南のアフリカ地域では、8件のプロジェクト(エチオピア、ガーナ、タンザニア、チャド、中央アフリカ共和国、ボツワナ、マリ及び南スーダン)を実施します。マリ及びチャドでは、日本がこれまでも安定化に向けた支援を行ってきたリプタコグルマ及びチャド湖周辺地域において、暴力再発リスクを低減し、住民間及び住民と国家当局との間の信頼を醸成するための支援を行います。エチオピアでは北部地方の地方行政サービスの回復及び紛争地区における住民の生計向上と地域経済の回復を目指します。 また、タンザニアでは、気候変動に伴う不規則な降雨パターンや大洪水で被害を受けているムトワラ地方において、先端技術を活用したスマート農業の導入を通じて小規模農家を支援します。 

欧州地域のうちウクライナでは、これまで日本政府との連携で取り組んできた公共インフラの復旧、地雷対策・被害者支援、がれき撤去とそのリサイクル、危機管理・復興プロセスにおける政府部門の能力強化、戦争被害者救済のための司法アクセスと人権の推進などの活動を行います。また、ウクライナ戦争による影響を受けている近隣のモルドバにおいても、気候変動や自然災害も含む複合的危機下において、農業食糧安全保障を強化するためのプロジェクトを実施する予定です。

更にラテンアメリカ・カリブ地域では治安悪化により情勢が悪化しているハイチで2件、国家警察アカデミーを通じた治安組織能力強化と未成年者及び女性を対象とした保護更生施設の改善に関する案件を実施します。

テーマ別プロジェクトである「ビジネスと人権」案件では、インド、インドネシア、カンボジア、キルギス、ネパール及びブラジルにおいて、各国政府や企業等による国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の実施を通じ、「責任あるビジネス」の実現を推進します。特に、日本企業を始めとする各国企業が、サプライチェーン上での企業活動による人権に対する有害な影響を評価・防止・緩和するためのプロセスである「人権デュー・ディリジェンス」を、事業活動を行う各国の状況に応じた形で適切に実施できるよう、「ビジネスと人権アカデミー」等を通じて支援します。

新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership (ADP)」では、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT基金)などとの協働のもと、アジア・太平洋4カ国・地域、アフリカ5カ国・地域の計9カ国・2地域、更には南南協力を通じ60か国以上において、結核、マラリア、顧みられない熱帯病(NTDs)対策に係わる医療技術へのアクセスと提供を確保するために必要な政策・規制の策定や人材、システムの開発を支援します。こういった医療システムの強化を通じ各国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に貢献するとともに、デジタル・ヘルスソリューションの拡大と、南南交流・協力の促進などによる、将来の新たなパンデミック(感染症の世界的流行)に備えるための支援を実施します。

UNDPでは、ニューヨーク本部や各国事務所、駐日代表事務所において日本人約100名(2024年2月現在。職員、コンサルタント、国連ボランティア等)が活躍しており、2023年度補正予算からの本拠出に関係するプロジェクトの計画策定・実施にも関与しています。 また、2023年1月~12月において、UNDPは、日本政府から総額約3億8,100万米ドルの資金拠出を受けました。これはUNDP資金パートナー国の中で最大額でした。