岡井朝子UNDP危機局長がウクライナを視察

エネルギー・インフラ、地雷対策、がれき撤去が最優先課題

2023年3月30日

ウクライナの復興と復旧の推定費用は4,110億ドルに上ります。UNDPは、地雷対策支援と並行して、緊急支援の従事者がコミュニティにアクセスできるよう、がれき撤去の規模拡大に注力しています。

UNDP Ukraine/Oleksandr Ratushniak

キーウ発 − わずか1年の間に、ウクライナでは国内総生産(GDP)が30%近く縮小し、エネルギー・インフラの半数が破壊されました。キーウを訪問した岡井朝子国連事務次長補 兼 国連開発計画(UNDP)危機局長は、エネルギー危機の回避、主要地域の地雷除去、建物の破壊で生じたがれき撤去などが、戦争で荒廃したウクライナの復興に向けた重要な第一歩だと語りました。

この戦争は、ウクライナの過去15年分の開発の成果を帳消しにし、貧困率を5%から24%へと悪化させました。戦争が終わるのを待つことはできません。何百、何千万人もの人々が貧困、飢餓、困窮に陥るのを防ぐために、ウクライナのしなやかな復旧と復興に今すぐに投資する必要があります」と岡井危機局長は警鐘を鳴らします。

ウクライナでは、この1年間で約140万戸の家屋が損壊し、500万人が職を失い、18万平方キロメートル以上(スイスの国土の4.5倍の面積)が地雷で汚染されたと推定されています。さらに、国のエネルギー・インフラの半数が破壊され、暖房も明かりも水もない状態に陥っているコミュニティーが多々あります。

岡井事務次長補は、UNDPがウクライナ政府およびパートナー機関と協力して、この重要な開発支援を行っていくというコミットメントを再確認しました。

深刻化するエネルギー危機に対応するため、UNDPは日本政府の資金援助により、電気を安定供給するための特殊なエネルギー関連機器を緊急に調達しています。調達物資には、450万人の家庭や事業所の明かりを維持するためのエネルギー供給に役立つ高圧単巻変圧器5台、キーウ地域向けの発電用ガスタービン、国中の学校、病院、消防署、警察署に電力を供給する1000台以上の発電機とポータブル電源が含まれます。

UNDPは、地雷対策を行う国連の主要機関として、ウクライナ非常事態庁が率先して行っている緊急除去活動を支援し、地雷除去作業員に訓練と保護具を提供しています。現在までに35万個の地雷や不発弾が除去され、約350万人 の安全が確保されました。しかし、ウクライナがこの戦争の遺物として残される爆発物から解放されるのは、数十年後になることが予想されます。

ウクライナの復興と復旧の推定費用は4,110億ドルに上ります。UNDPは、地雷対策支援と並行して、緊急支援の従事者がコミュニティにアクセスできるよう、がれき撤去の規模拡大に注力しています。また、機械学習アルゴリズム、データスキャン、リモートセンシング、ドローンによる画像解析などを用いて、損壊状況の分析を行っています。

「UNDPがウクライナの人々の甚大な支援ニーズに迅速かつ効果的に応えることができるのは、ドナーの方々からの貴重な御支援のおかげです。しかしながら、現状をみればまだまだ取り組みが必要です。ウクライナの膨大な復旧・復興ニーズに対して、我々の総力を結集した活動をさらに拡大するためにも、より大規模な支援が緊急に必要です。私たちは、ウクライナ政府と共に、ウクライナの人々の明るい未来の基礎を築かなければなりません」と岡井事務次長補は訴えました。

 


ウクライナにおけるUNDPの活動について 

UNDPは過去30年にわたりウクライナで活動を行っており、戦闘が続く中でも現場に立ち続け活動を継続してきました。400名からなる職員の大半はウクライナ国籍です。UNDPはこれからもずっと、ウクライナの人々を支援していきます。