最前線から:1人の女性が新型コロナウイルス(COVID-19)の恐怖から生き延びた方法

2020年4月6日

退院する時に家族からもらった花と共に Photo: UNDP China

2月23日、中国鄭州での平和な日曜日の朝に、突然地元の病院から電話がかかってきました。数日前に私のアパートに立ち寄った友人が新型コロナウイルスの陽性だったと知らされました。すぐに病院での隔離をする必要があると告げられ、私たちを移送するために医療従事者が到着するまで、今いるその場から離れないように言われました。そうこうしている内に防護具に身をつつんだ3人が家に来ました。まず、その1人はすぐに各部屋の消毒を始め、他の2人は私と両親の病歴、最近の旅行歴、陽性の友人が私たちを訪問して以来連絡を取っていた人々についての聞き取りフォームの記入を手伝ってくれました。

家を出る前に、母はできる限りのマスクをバッグにつめ込み、私は急いでオウムに餌をやり、職場の上司にメールを送りました。父は銀行カードと保険証を持っていくようにしました。私たちが救急車に乗り込んだとき、隣人がバルコニーに立って我々を見ていることに気づきました。「サイレンが鳴らなかったらよかったのに」と心の中で願いました。

もちろん、他の皆と同じように、私は毎日新型コロナウイルスに関するニュースを追っていましたが、それでも私が病院に足を踏み入れた瞬間に感じたものは、それはまだ非現実的な出来事のようでした。私がまず病院で思ったのは、消毒剤の強烈なにおい。膨らむ不安に対して、そこでの最初のニュースは意外にも心強いものでした。私たちのCTスキャンに異常はなく、核酸検査では全員が陰性という結果が出たのです。

すべての人のための医療

検査費用を支払う必要がないことに驚きました。医師は3度検査しましたが、それらに対して何も請求しませんでした。すべての検査、マスク、そして食べ物さえ無償で提供されました。陽性であると確認されたとしても国がすべて負担することになっているのだと、担当医師は教えてくれました。つまり父は銀行カードや保険証を持ってくる必要はなかったのです。

担当の看護師一人が1時間ごとに検温にやって来て、その都度私の体温記録を記したノートを持っていました。彼女は常にマスクをしていたので、最後まで顔を見る機会はありませんでした。

数日後、両親は家に帰ることが許可されましたが、私は突然軽い熱が出たので帰れなくなったのです。その時パニックにならなかったと言ったら嘘になります。検温し大量の水を飲みましたが、それも役には立ちませんでした。医師は再検査し、もう一度肺をスキャンすることに決めました。どちらの結果も問題ありませんでしたが、なぜか発熱が3日間続きました。死ぬ前の最後の数日になってしまうのではないかと本当に恐ろしかったです。あまり考えすぎたくなかったので、新型コロナウイルスの致死率などに関するニュースは見ないようにしました。ポジティブになろうと、執筆、運動、絵を書いたりすることで気をそらしました。親しい友人全員に電話して声を聞きました。念のため、両親に長い手紙も書きました。仕事の面では、遠隔勤務中であったことは、平常な感覚や何かを楽しみにすることを思い浮かべることに役立ちました。

素敵な同僚の皆が私を励ましてくれたので、日々の遠隔のチームミーティングをこれまで以上に楽しみましたし、体調の回復にも繋がりました。このような状況に置かれることがどれほど困難なことか理解するのは難しいでしょう。致命的な伝染病に感染している可能性があるから怖いのに、その気持ちをどう誰とどのように共有すればよいか分からないのです。

#SpreadTheWordNotTheVirus (#ウイルスでなく言葉を広める)

何十万人もの人々に、意識向上を通じて疫病と闘うのに役立つプラットフォームを提供する#SpreadTheWordNotTheVirusのキャンペーンを支援できたことを誇りに思います。仕事を続けることで、病院のベッドからでも私自身も何らかの形で戦いに少しでも貢献しているのだと感じることができました。

新型コロナウイルスに感染した可哀想な友人と長い電話をした夜を忘れません。それぞれこの先の人生を思い、退院したらやることをリストアップし始めました。話は尽きず、2人共気づくと眠りに落ちていました。

その夜は私が発熱して以来初めてよく眠れた夜になりました。翌朝、ようやく体温が下がりました。医師はストレスによるものであった可能性があり、発熱は新型コロナウイルスによって引き起こされたのではないと最終的に結論づけました。そして次の日、私はようやく家に帰ることを許されたのです。その後、ウイルスに感染した友人も無事回復していたことを知りました。

とても困難な時

新型コロナウイルスは一過性のウイルスですが、家族、友人、看護師、医師、国連開発計画(UNDP)の同僚からもらった愛と思いやりは続きます。皆、私の入院中ずっと寄り添ってくれました。

疑いもなく世界中の全ての人にとって非常に困難な時を今過ごしています。しかし、多くの人々が状況を良くするために立ち向かっていることを感じ、また小さな行動にも心を動かされます。それは例えば、人を励ます、支援を表明する、または、些細な行動やジェスチャーを通しての思いやりであったりします。これらの気づきは新型コロナウイルスの経験から得た最も価値のあることだと思います。ウイルスは人の命を奪う可能性がありますが、人々の間で共有される暖かさと人生への情熱は、この戦いに勝つために真に重要なものなのです。