新型コロナウイルスの教訓を生物多様性の危機に活かす

2020年4月15日

自然と開発における多次元的な課題を解決する為の良い始め方は、アグロフォレストリーや再生可能な有機農業、この写真のカンボジアの様にマングローブの回復に対する大規模な投資を確実に行うことです。Photo: UNDP Cambodia/Manuth Buth

2020年2月、私は生物多様性に関する計画を行う主要な3つの会議のうちの1つの会議に出席しました。当初は中国で行われる予定でしたが、ローマに会場を変更し開催されました。私が到着した日、新型コロナウイルスに罹患した患者が北イタリアで3名確認されました。その2日後には5名、5日後には229名と増えていき、主要なワークショップを待たず私は5日目に会議を去ることを決意しました。同僚は私が過剰反応したとからかい、私自身もそうだったのではないかと考えました。昔受けた公衆衛生に関するトレーニングの経験から、これは単なる遠くの波ではなくやがて世界に打ち寄せる止めることのできない津波だと思ったのです。数週間も経たないうちにこの津波の甚大さは明白になり、世紀に一度の、地球上のあらゆる社会をひっくり返すほどの脅威となりました。

2020年は、「自然のためのスーパーイヤー("super-year" for nature)」となるはずでした。世界保護会議国連海洋会議国連自然サミット、といった10年にわたる「2020年以降の生物多様性枠組み」について合意する世界的な生物多様性に関する会議で最高潮に達する予定だったのです。さらに、今年は「生態系回復の10年」が立ち上げられ、自然に基づいた解決策が気候変動に関する交渉の中でようやく認識されることになっていました。しかし新型コロナウイルスには異なる計画があったようです。我々はこれまで以上に迅速に学び、適応し、このウイルス危機から世界的な生物多様性の喪失に対する教訓を学ぶでしょう。

社会の弱点を明らかにする

複雑で相互関連している社会システムは、そのもろい繋がりに伴い脆弱になります。新型コロナウイルスは世界中の社会の弱点、特に保健医療、ホームレス、不平等の問題を明らかにしました。保健システムは必要不可欠な器具の供給を脆弱なグローバルサプライチェーンに頼っています。私は幸運にもローマから早めに帰国し、ある程度の備蓄を購入して避難することができましたが、人類の80%は1日10ドル未満で生活しており、彼らは社会的または経済的なセーフティネットが全く無いままこのパンデミックに直面するでしょう。

新型コロナウイルスによりこれから起きる変化は複雑で予測困難でしょう。私がローマで患者数が急増するのを目の当たりにしたように、この変化は急激な成長曲線で起こります。よく我々が非常に過小評価してしまうパターンです。また転換点がいくつかあったことも明らかです。早い段階で行動することには大きな効果があり、遅くなってしまっては対応が非常に難しくなります。後戻りできない転換点を超えた後の対応はほとんど、もしくは全くもって効果がないかもしれません。私たちは変化に対して率先してスマートに反応しなければいけません。検査や隔離といった対策を早急で強固に講じ、パンデミックの流行曲線を抑えようとした国では、新型コロナウイルスによる死亡率は最も低くなっています。対応のタイミングがすべてです。

変革のペースと度合は、私たちを驚かせることでしょう。「平常どおりのビジネス」を望む強力な勢力は現状維持を望んでいますが、新型コロナウイルス危機は異議を唱えます。昨日は不可能と思われていた行動が、今日は可能であるように見え、明日は避けられないように見えるかもしれません。武漢のような閉鎖はイタリアでは不可能であるように見え、イタリアのような閉鎖はニューヨークでは不可能のように見えました。現在、都市封鎖は世界中で避けられないようです。

我々はこういった教訓をどう生物多様性の分野に活かすことができるでしょうか?

1.グローバルシステムの最も脆弱なリンクを強化することにより、自然に基づいた地球のセーフティネットを作る

自然や生態系は密接に織り合わさっています。例えば、生物多様性の喪失は世界の食料システムを脅かします - 花粉の媒介となっている生物や、世界の作物の35%も脆弱です。花粉の媒介者を含め100万種が絶滅の危機に瀕しており、人類のセーフティネットとして自然の生態系を強化しなければなりません。

2.複雑で多次元的な課題を解決する高密度の多次元ソリューションを選ぶ

自然と開発における複数の多次元の課題を同時に解決するには、できるだけ効率的である必要があります。環境に配慮した新型コロナウイルス救済計画への要求はすでに高まっています。自然と開発における多次元的な課題を解決する為の良い始め方は、アグロフォレストリーや再生可能な有機農業、マングローブの回復などに対する大規模な投資を確実に行うことです。このようなソリューションは、生物多様性の危機を食い止め、温室効果ガスの3分の1以上を軽減し、災害を防ぎ、貧困の中に生きその生活を直接的に自然に依存する20億人以上の人々を守ることに役立ちます。

3. 今すぐ行動を起こす

スマートで戦略的な行動を進んで起こさなければなりません。現状に異を唱え、変化に抵抗する強力な勢力に反論することを意味します。科学に耳を傾け、自然の限界点を理解して、そこに達することを回避しなければなりません。今ある最良の空間データを利用して、土地利用に関する情報に基づいた決定を行うべきです。新型コロナウイルスと同様に、種の絶滅や生態系の崩壊を防ぐための措置を講じることは、主としてタイミングの問題です。私はイタリアから急いで出たことを、過剰反応だったかもしれないと考えていました。「あなたがパンデミックの前に行うことはすべて過剰反応しているように見え、パンデミックの後に行うことはすべて足りなく、遅すぎるように見えるのです。」という一文を読むまでは。人類はかつてないほど高いリスクにさらされています。今こそ行動すべき時です。

4.自然のための大胆な復興援助計画(マーシャルプラン)をつくる

私たちは生物多様性の危機に対して、大胆かつ調整された包括的な計画に基づき、一丸となって行動しなければなりません。2020年後の生物多様性枠組みの草案は生物多様性喪失の流れを変えるほどに変革的なものではありません。生物多様性の保護、回復、持続可能な管理に十分に投資し、持続可能な開発の中心に自然を再配置する、自然の為の復興計画を策定するのです。そうしなければ、ゆっくりと忍び寄り重大な結末を人類にもたらす危機に私たちは屈することです。そしてその危機は結果的に新型コロナウイルスよりもはるかに甚大な影響を及ぼすでしょう。

他の多くのイベント同様に、今年の生物多様性関連イベントのほとんどは、来年まで延期が決定されています。しかし、私たちが新型コロナウイルスによる危機から立ち直るとき、この経験から厳しい教訓を学び、人類の存続を脅かす生物多様性の喪失という危機に対して活かすことができれば、2020年は結果的に自然にとって「スーパーイヤー」になるのです。