ナミビアのウィントフック市ゴレアンガブにおける都市菜園を通じた飢餓と栄養不良の解決

2022年1月31日

ナミビアのウィントフック市ゴレアンガブ郊外で、自宅裏庭の菜園を誇らしげに紹介するオーギュスト・カンコンディさん

オーギュスト・カンコンディさんは、ナミビアのウィントフック市ゴレアンガブ地区に住む新興の都市農家です。ゴレアンガブは貧困と食料不足に深刻な影響を受けているコミュニティの1つです。しかし、オーギュストさんが「よりよい復興」(BBB:ビルド・バック・ベター)都市農業プロジェクトで得た経験のお陰で、コミュニティの食料供給を支える都市菜園がいくつも生まれています。

当初計画したキャリアとは異なりますが、都市農家であると誇りをもって言えます。私の故郷ではどんな仕事につくのも簡単ではなかったため、12年生(日本の高校3年生)を終えた後、私はオムサティ州のオカハオにある故郷の村を離れなければなりませんでした。そこでウィントフックに仕事を探しに行くことにしました。しばらくして職を得ましたが、また失業し、3年間家にいることを余儀なくされました。

オーギュストさんはより良い機会とより良い生活の保証を求めて、故郷の村からウィントフック市に移り住みました。しかし、農村部から都市部への移住を考えていたのは、オーギュスト・カンコンディさんだけではありませんでした。ナミビアでは、農村部における機会の減少に伴い、大規模な人口移動が起きています。人口過剰や暴力、疾病や飢餓から逃れる必要性が生じたことが、人口移動が急増する引き金となりました。この移住は都市部のインフラやサービスを一段と疲弊させるとともに、貧困と食料不足を深刻化させています。直接的な結果として、ナミビアの都市部の貧困層は雇用や清潔な水、十分な食料を得られず、都市部のスラムで暮らしています。

オーギュスト・カンコンディさんは、ナミビアのウィントフック市ゴレアンガブ郊外のコミュニティで週に一度、近所の家庭菜園を訪ねています

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が猛威を振るうなか、貧しく脆弱な立場に置かれている都市部世帯に対する食料安全保障の強化はより一層の急務となりました。これはナミビアの「よりよい復興」(BBB)都市農業プロジェクトが重視している点です。BBB都市農業プロジェクトは、ナミビアの農水・土地改革省(MAWLR)が設立したマルチステークホルダー・パートナーシップであり、日本政府による出資を受け、国連開発計画(UNDP)ナミビア事務所とナミビアの4つの州政府を通じて共同で実施されています。この4つの州(エロンゴ州、ハーダップ州、東カバンゴ州、ホマス州)では、BBB都市農業プロジェクトを通じて複数の都市菜園計画が実施されています。

オーギュスト・カンコンディさんは、ウィントフック市ゴレアンガブの市有地、オククナ農園におけるプロジェクトの受益者の1人です。ウィントフック市議会は、都市菜園プロジェクトとコミュニティ向けの農業訓練センターにのみ利用を許可しています。

故郷のオカハオでマハング(キビ)を育てていたので、オククナ農園でスタートしたころは、農業についてほんのわずかだけ知識がありました。でも、野菜やハーブの栽培についてはあまり知りませんでした。オククナ農園では、有機堆肥の作り方や、冬と夏で異なる種類の野菜を育てる方法について訓練を受けました」

都市農業は決して新しい概念ではありません。都市農業は、都市部の貧しく脆弱な立場に置かれた人々が自宅の裏庭で作物を育成することを通じて、食料不足や飢餓への対処を支援する方策の1つとして確立されています。都市菜園すなわち「都市農業」「アーバン・ファーミング」は、都市部や都市部周辺の環境で様々な種類や品種の作物や植物を育てるプロセスの総称です。

オククナ農園で訓練を受けるうちに、わくわくしてきました。そしてゴレアンガブにある自宅の小さなスペースで、学んだことを実践し始めました。始めはとても小さな規模でしたが、少しずつ庭を広げ、家の前側まで拡大していきました。ほうれん草やビーツ、にんじんやハーブを育て、4歳から19歳までの4人の子供たちに食べさせられるようになりました。さらに近所の人に安く売ることができるほどたくさんの野菜を収穫できるようになりました。

オーギュスト・カンコンディさんは、ナミビアのウィントフック市ゴレアンガブ郊外にある自身の都市菜園で収穫したほうれん草を、夕方に庭先で販売するため小分けにしています

新型コロナのパンデミックもまた、インフォーマルセクターに雇用の減少や所得の喪失といったさらなる問題をもたらし、ゴレアンガブなどのコミュニティでは貧しく脆弱な立場に置かれた人々の購買力に悪影響が及びました。

近所の人たちから菜園を見せてほしいと言われることが増えたので、彼女たちが庭で家庭菜園を始めるのにふさわしい、十分な自然光と日影があるスペースを探すお手伝いをするために、私の方から家を訪ねることにしました。

オーギュスト・カンコンディさんは、ナミビアのウィントフック市ゴレアンガブで駆け出しの都市農家に助言や励ましを続けていますが、彼女のコミュニティ支援活動の波及効果は既に明白です
新型コロナウイルスのパンデミックが発生してからというもの、飢餓が近所の人たちに与える影響を目の当たりにしたので、幼い子供をたくさん抱えたある女性に勇気を出して声をかけました。彼女の家には広いスペースがなかったので、村でマハング(キビ)を育てるのとは異なる方法である都市農業を彼女に紹介してみました。そして古タイヤを使って菜園を増やす方法を教えたのです。それ以来、ゴレアンガブの多くの人たちが私のところへ学びに来るようになり、私はフードサークルや堆肥の作り方を教えてきました。これが私のコミュニティにおいて飢餓問題の解決に貢献する、私なりのささやかな方法だと信じています。


オーギュスト・カンコンディさんは、自分が学んだことや受けた訓練をコミュニティの複数の人々に伝えています。都市菜園の概念が多様化している形跡は、ナミビアのウィントフック市ゴレアンガブの地域全体ですでに芽生えています。

BBB都市農業プロジェクトは、日本政府の2020年度補正予算の優先事項に沿って、ナミビアの都市部における食料安全保障と栄養不良の改善に重点を置くことで、パンデミックが同国に及ぼす現在の社会経済的な影響に対応するものです。

オーギュスト・カンコンディさんは、ナミビアのウィントフック市におけるBBB都市農業プロジェクトでの経験があったからこそ、ゴレアンガブに都市菜園を広めることができたと考えています