地球規模の変化は、地域のレジリエンスから始まる

ギニアビサウにおけるUNDPと日本のパートナーシップを通じたプロジェクト

2022年11月25日

売るための魚を準備するエルギラ

UNDPギニアビサウ事務所 / Elena Touriño Lorenzo

ギニアビサウ首都ビサウのプルバ地区では、数カ月前には数える程度であったも事業数が、現在では300以上に増えています。ブルーエコノミー、クリエイティブ産業、デジタル金融、物流・輸送、食品加工は、若者や女性がこの地域で生産性を高めるために取り組んでいる事業分野のほんの一例です。UNDPは「新型コロナウイルスの影響を緩和する3x6アプローチ」プロジェクトを通じ、地域の人々が忍耐力と回復力を取り戻し、小規模起業の立ち上げに至るまで支援をしてきました。

エルギラ・イエは26歳で、中学1年生まで学校に通っていました。現在、彼女には学校に通う2人の娘がいて、将来は大学を卒業することを夢見ています。「なぜ、魚を売る商売をしているのですか」という問いに、彼女は明快に答えました。彼女は母親を手伝うために学校を辞め、13年間魚を売ってきました。以前から魚を売っていたエルギラですが、同プロジェクトを通じてビジネス環境が改善されました。「以前は、魚を保存できる環境が整っていなかったので、販売量が少なかったのですが、今はたくさん利益が出るようになりました」と説明しました。日本政府とUNDPが連携して実施したプロジェクト「グリーンな復興を目指すブルーエコノミーの推進」の支援を受け、彼女は直立型冷凍庫、チェストフリーザー、バケツ、小さな作業道具を入手することができました。彼女は、公共交通機関を利用して通うブバケの漁師から2週間毎に魚を購入しています。

ママドゥ(写真右)とゲラ・メンデス校の友人たち

UNDPギニアビサウ事務所 / Elena Touriño Lorenzo

雇用創出と生計促進という構成要素に基づくUNDPの3x6アプローチは、他の多くのプロジェクト受益者と同様、エルギラの生活に影響を与えました。プロジェクト開始当初、彼女は叔母の一人と暮らしていましたが、今では自分の部屋を借りて小さな娘たちと一緒に、いつも家族のそばで暮らせるようになりました。「彼女は、コミュニティワークの第1段階が終わった時点で、プロジェクトを離れたいと考えていました。研修の段階まで続けても、内容についていけないと考えたからです。私たちは彼女に続けるよう説得し、今では彼女は事業を立ち上げるに至りました」と、コミュニティでの支援活動を実施したパートナーのイタリアの国際NGOであるENGIMのトレーナー兼データ管理者であるヘルドリーノ・コレイアは述べました。

3x6アプローチは、受益者自身を価値創造と社会経済的復興における積極的な担い手と見なすもので、プルバ地区におけるコロナ禍の厳しい影響から回復させることを目的に実施されました。住人が即座に収入を得ること、地域経済に資源を投入すること、そして生計を多様化する機会を提供することが、同アプローチの核心となっています。「このプロジェクトのおかげで、廃棄物処理に関する知識を得ることができましたし、地域社会に対する考え方や、地域社会でどのように働けばいいのかということもわかりました」とママドゥ・バは振り返ります。しかし、彼が選んだのは清掃業ではなく、塩の製品化でした。事業創出トレーニングで地元産品と国産品の講義を受講したときから、起業アイデアは明確だったと彼は語りますが、プロジェクトの資金で再建されたゲラ・メンデス校の若い生徒たちからは不思議そうな目で見られていました。「商品化された国産塩がなかなか手に入らないのを見て、このアイデアを思いつきました。オイオ地方のファリムの女性塩生産者から塩を仕入れています」。自宅の小さな包装ラインから出荷されたばかりの、すぐに販売できる製品を誇らしげに見せてくれた。

エルギラもママドゥも、その将来は明るいものに見えます。エルギラは家族を支えるために商売を成長させてギニアビサウ全土で販売するための拠点が欲しいと思っています。ママドゥは、勉強を続けられるだけの収入を得られるようになることが夢です。ビサウ市議会との間で、プロジェクトの受益者は活動開始後6カ月間、市税を免除されることが合意されています。彼らが資金を全額使って事業を立ち上げることを目的にしているためです。

首都ビサウのプルバでのパイロットケースの成功によって、同プロジェクトで確立したイノベーション・ハブが首都を越えてさらに4つの地域に介入を拡大する基盤ができました。「ここでは、起業アイデアが限られていました。園芸をやりたい人は何人もいましたが、場所がなく、土地を買うにもお金がかかるのです」とヘルドリーノは述べています。バファタ、ビジャゴス/ボラマ、カチェウ、ガブといった地区は、3x6プロジェクトを拡大するために選ばれた地域ですが、脆弱性が高く、起業機会が非常に限られた場所でもあります。

この新しいイノベーション・ハブの取り組みは、農業、ブルーエコノミー、その他のSDGsに沿った事業案など、優先度の高い経済活動に焦点を当て、より生産性の高いものとなるよう意図されています。優れた事業手法を促進するための技術支援を提供する一方で、特に女性や若者に注目し、金融リテラシーとクレジットへのアクセスを高めるためのスキル開発に重点を置いています。4地域の地元企業や起業家がイノベーションと持続可能な起業のための資金にアクセスできるようになるのです。 イノベーション・ハブの目的は、起業家精神と民間部門の発展を促進する機能的なエコシステムを構築し、ギニアビサウの構造転換を達成することです。首都ビサウでこれまでに学んだすべての教訓を基に地方展開することで、教訓を応用し、経済の多様化と地方市場の発展を目指します。エルギラスやママドゥたちは、島や内陸部で生計を多様化し、社会経済的発展に貢献する機会を待っています。コロナ禍の影響が続く中、こうした事例は小さいものの、地域の回復と革新を進めるものであり、ひいては誰も置き去りにしないために必要な世界の変化に貢献していくでしょう。